会長のあいさつ

京都弁護士会 会長 安保 嘉博(あぼ よしひろ)
1解消する弁護士過疎ー京都府下全域に弁護士が展開
京都弁護士会の設立は明治26年に旧弁護士法が制定された時に遡ります。37名の会員で出発したとのことですが、司法制度改革により毎年約50人の会員が増えており本年6月11日現在で京都弁護士会の会員数は496名となっています。京都の北部地域は長年弁護士過疎地域といわれていましたが、この1,2年で急増し今では福知山、舞鶴、宮津などに合計15名、来年までにさらに3,4名の増員があり20名近くになる見込みです。宇治以南の南部地域にも6月に2名増員があり宇治、京田辺、木津川市に多くの法律事務所が展開しています。弁護士がより身近に存在することで府民や行政の法的需要に対応できる体制が整ってきたといえます。
2この間の京都弁護士会の取り組みと今後の活動について
①司法修習生に対する給費制維持を求める活動
司法修習生は修習専念義務がありアルバイトも許されませんので、戦後63年間、給与が支給されていました。ところが平成16年に裁判所法改正があり平成22年11月から給与制は廃止され、貸与制に移行することにされたのです。その改正趣旨は修習生は仕事ではなく勉強しているにすぎないから給与まで出すのは行き過ぎだ、貸与制に変更しても、弁護士になれば収入があるのだから将来返済できるだろうというものでした。ところが今、修習生が弁護士事務所に就職を希望しても、採用する事務所が少なく、この12月の卒業生で内定率は約50%にしか達していません。職に就こうにもつけない状況になっているのです。就職できないからといって弁護士の仕事はいきなり独立開業してやっていけるものでもありません。このような状況で貸与制に移行すれば、親のスネかじりができる家庭の子弟しか弁護士に進めないことになるか多額の負債を抱えて弁護士になるしかありません。これでは社会的経済的弱者の権利擁護に奉仕する弁護士のあり方が変質することが危惧されます。京都弁護士会は本年5月27日の定期総会で給費制維持を求める決議を全員一致で採択し、さらに会長を本部長とし、総勢130名を越える会員で給費制維持緊急対策本部を設置しました。今年の11月の給費制廃止の阻止を目指して運動を展開して参ります。
②取調べの全面的可視化(録画)を求める取組み
本年5月15日、京都駅前のキャンパスプラザに布川事件の元被告人である桜井さん杉山さんをお招きし取調可視化を求めるシンポジウムを開催し約150名の市民の参加がありました。強盗殺人罪で無期懲役の刑が確定しながら、今年再審が始まることになった同事件は、警察検察による違法不当な取調と証拠隠しによる典型的な冤罪であることがお二人の話から手に取るようにわかりました。自白調書の作成過程を録画することは虚偽の自白調書の作成を抑止するのに極めて有効な制度です。民主党がマニフェストに掲げた取調の全面的可視化が菅直人新首相の下で一日も早く立法化されるよう運動を進めています。
③法律相談体制の改革ー専門相談、無料相談、夜間相談の展開
弁護士会が行っている法律相談は、どのような相談でも扱う「何でも相談」が基本ですが、個々の問題に精通した弁護士の相談を受けたいとの要望が強まり、専門相談を徐々に充実させてきています。現在でも多重債務、交通事故、相続遺言、中小企業、高齢者障害者、子どもについては専門相談窓口を設けています。今後は離婚問題についても専門相談窓口設置を検討します。また夜間相談枠の増加にも取り組みます。また一定の資力以下の方が無料で法律相談が受けられる法テラス相談は弁護士会の各法律相談センター(弁護士会館、京都駅前、丹後、福知山、舞鶴、園部、南部)や法テラス契約弁護士事務所でも利用できますのでご遠慮なくお問い合わせ下さい。
理事者だより
京都弁護士会 副会長 小林 務(こばやし つとむ)
9月になりました
今年の夏は、真夏日や熱帯夜続きで大変でした。お盆を過ぎ、朝夕は多少涼しく感じるようになりましたが、9月に入っても30度をはるかに超える日々が続いています。私たちが理事者に就任してから5か月が過ぎ、もうすぐ折り返し地点です。この間、京都弁護士会は多くの課題に取り組んできましたが、特に重要課題として取り組んできた司法修習生に対する給費制維持を求める活動をご紹介いたします。
司法修習生とは
司法試験合格後、すぐに弁護士や裁判官や検察官になれるのではありません。1年間、司法修習生という国家公務員に準じる身分になり、弁護士会、裁判所、検察庁で実務修習を行い、司法実務を学び、司法研修所での修習を経ることになります。そして、修習終了後、2回試験と呼ばれる国家試験に合格して初めて弁護士や裁判官や検察官になることのできる資格を与えられます。
司法修習生は修習専念義務があり、アルバイトが禁止されています。そのため、戦後63年間、給与が司法修習生に支給されていました。給費制と呼ばれています。ところが、2004年の裁判所法改正により、2010年11月から給費制は廃止され、新64期の司法修習生には生活費を貸与する制度に移行することとされました。その改正趣旨は、修習生は仕事ではなく勉強しているにすぎないから給与まで出すのは行き過ぎだ、貸与制に変更しても、弁護士になれば収入があるのだから将来返済できるだろうというものでした。
現在の司法修習生を取り巻く状況
現在、修習生が法律事務所に就職を希望しても、採用する事務所が少なく、2010年12月に修習を終える新63期の弁護士事務所への就職内定率は約60%程度です。司法修習生が弁護士事務所へ就職したくても就職できない状況になっています。このような状況で給費制を廃止すれば、司法修習を終えても借金だけが残ることになりかねません。裕福な家庭の子か、多額の負債を抱える覚悟のある者しか司法試験を目指さなくなる可能性があります。
弁護士業務の公益性
弁護士法第1条は、弁護士の使命として、社会正義の実現と人権擁護を謳っています。社会正義の実現と人権擁護のためには、時には、国家権力と対峙することも求められます。冤罪事件や国や地方公共団体を相手とする行政訴訟が典型的なものです。弁護士が在野であるからこそ、国民の権利を擁護することができるのです。私人間で紛争が生じた時に、弁護士に相談し、依頼することにより権利を守ってもらえます。国民の権利を擁護する制度として弁護士制度は存在しているのです。だからこそ、社会的インフラとして、国民の権利を擁護する者を国費で養成する必要があるのです。これが給費制による司法修習制度です。弁護士業務は公益性を有しているといえるのです。ですから、弁護士になれば収入があるのだから将来返済できるだろうという受益者負担的な発想は誤りなのです。しかし、今、この司法修習制度が歪められようとしています。
京都弁護士会の活動
そこで、京都弁護士会は本年5月の定期総会で給費制維持を求める決議を全員一致で採択しました。また、給費制維持緊急対策本部を設置し、会長を本部長として、会員約500名中250名を超える会員が本部員登録をし、活動しています。街頭宣伝活動を行なったり、給費制維持を求める署名を集めました。京都弁護士会が集めた署名は全国3位の多さです。
また、去る8月28日には、給費制維持を求める集会を京都駅南のアバンティホールで開催しました。日弁連の宇都宮会長にお越しいただきました。約240名の市民に参加していただき、成功を収めました。
9月16日には、東京で2000人パレードと参議院会館内での集会を予定しています。京都弁護士会からも多くの会員を派遣します。
9月の臨時国会で給費制を維持する裁判所法の改正が成立することを願っています。
意見・声明
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